【双子の妹、茜へ】こんにちは、あなたの葵だよ。このお手紙はあなたに届くでしょうか。生まれたときから隣にいた茜、でも私たちはたったの十数年間で分かたれてしまったね。私たちが自立するとき、私はあなたに約束しました。「おソロのぼうしをつくって、また会いに行くね！」と。私はせっせと羊小屋に向かい、一生懸命お世話して、ぼうしをふたつつくりました。あなたを探しに行ったとき、あなたは捕まえたウサギを並べていたね。茜は「わあー、はやい！」と喜んで、「私はいま葵にリュックをつくってるの！」と言ってくれたね。私は嬉しくなって、やっぱり染色してから渡す、といいました。そうしたら茜は「ミョウバンね！」といって、私の代わりに材料を探しに走ってくれたよね。(茜は昔から行動が早かった。自立だって、お姉ちゃんの私より先に言いだしたね。私は活発な茜を追いかけて、いってきますしたんだよ。)私は感謝の気持ちを表すために、茜がウサギを並べていたところへパイを運びました。そのあと私もすぐ染色できるよう準備を進めようと思ったけれど、帽子の置き場所に困ってしまって、茜に染色準備中は未完成の帽子をかぶってもらおうと思いウサギ置き場に行ったけど、ウサギは皮も剥ぎ取られずそのままだった。パイも減っていない…。どこまで行ってしまったんだろう、村にはいるのかな…。知り合いに「私にそっくりな茜という子を知りませんか？」と聞いて回り、周辺を探しました。私の髪が伸びても、大人になってもあなたは戻らなかった。どうしよう、とじりじりしていたところへ、村人が「家系図を見たら？」といってくれたので、そうすることにしたの。生きているはずだと信じて、探しました。私たち、血が繋がっているわけではないから、すこし探すのが大変だったんだよ(笑) 時間がかかったけど、そのあいだ、家系図を見ることを伝えた人たちが介護してくれたから私は戻ってこれた。あなたがもういない世界に…。私は村人に茜の死を伝え、帽子をもって骨を探すことにしました。お墓を作ってあげたかったの。けれど一度おちた私は、どの骨が茜だったのか、わかりませんでした。弔いもできないままで、私はますます茜のことをひきずったよ。子供が生まれても、なぜここにかわいい茜とかわいいあなたの子供がいないのか…。私があのとき余計なことを言わなければ、いまごろあなたと託児所でママ友トークしてたにちがいないのに…。それでも私は周りの人に支えられて、何とか生きました。るかさんを覚えていますか？るかにいちゃん。私たちがまだずっと幼かった頃、「ぼくイケメン」といううざ絡み(とても楽しかった笑)をしてきたあの人です。あのときは「おこがましい。せめてラーメンだ！」なんて返したけれど、るかにいちゃんはとってもイケメンに育ちました。染め物をよくする人で、私の帽子も茜色に染めてくれた。私は染めるとき、私だけ色のついた帽子をかぶっていいんだろうか、とも思ったんだけど、茜の色の、茜の帽子を、かぶれなかった茜の代わりに私がかぶることにしたよ。その帽子は白髪の私がしぬとき、息子にあなたの存在とともに譲りました。残念ながら廃村になってしまったんだけど、最後までるかにいちゃんや息子たちとわちゃわちゃしながら楽しんだよ。るかにいちゃんとの出会いも茜がいなかったらなかったね。私たちがお互いを「かわいい」「かわいい」と褒め合ってきたときに、彼は対抗してきたんだよね(笑) ママは「おんなじ顔だよ」ってつっのんでたなあ。奇妙な縁で双子になれた私たち。まるで鏡のような私たち。けれど、しわくちゃに年を重ねられた私。かわいいままでしんだ茜。私のせいでしんだ茜。あなたの来世が光に溢れていますように。